株式会社アグリヘリテージ は、新潟県聖籠町で、水稲・大豆・大麦を中心に約75haを管理しています。春先(4〜5月)はトラクター作業が重なり、1日乗りっぱなしになることもある。 そこで 「まずは負担を軽くするため」に FJD AT1 と AT2 自動操舵システム (以下、FJD)を導 入した。
「4〜5月はほとんどトラクターですね。1日乗りっぱなしもある。最初は負担軽減がいち ばん大きかったですね」 代表取締役の荒木祥史さんはそう話す。使っていくうちに、狙いどころは次第に変わって いった。
「せっかく費用かけて自動操舵入れたんだったら、その分『稼がなきゃ』って。今年は特 にそう感じました」 自動操舵でハンドル操作を自動化することで思考に余白ができ、様々なことを試せる― 荒木さんと取締役の吉田敏之さんに、FJDの使い心地を聞いた。

超低速でも、ちゃんと条間が揃う
ナガイモの定植前のトレンチャー(溝掘り)は時速1km以下で行う。ひたすらにゆっくり で、気を使う工程だ。ここでは自動操舵の効果が分かりやすい。
「すごくだるい作業なんですけど、FJDは誤差2cm以内。条間120cmのピッチがきれい に揃う。 今年は、作業の様子を見た他の生産者も『これはすげえな』って。前は目線を合わせたり 後ろを注視したりしてズレないようにしてたんですが、特に今年は車内で読書しながらで きました」
条間が均一だと、その後がラク
アグリヘリテージでは、畑作物の播種はすべて自動操舵を使っている。麦や大豆は、播種 の均一さがそのまま管理のしやすさに跳ね返る。
「播種が均一だと、その後の管理がラクなんですよね。播種とか定植とか、そこでの自動 操舵の恩恵ってすごいなと思います」
ピッチが揃うことで生育の均一化が期待できる。播種がまっすぐだと圃場全体をムダなく 使うことができるうえ。汎用コンバインでの収穫もラクになる。資材・燃料・時間のムダ が減り、結果として収益にまっすぐつながるのだという。
正確な直進を当たり前にしつつ、試せる余白
代かきの「まっすぐ」は、その後の田植え機の走行に効く。
「代かきは、特に水が抜けない圃場では自動操舵が有効ですね。深水で田面が見えなくて も、センターラインを見失わない。基本は自分が代かき担当で、後発で吉田が田植え機で 入るんですけど、まっすぐ走れているかどうかで、代の仕上がりが全然違います。

それに、自動操舵に任せられることで他のことを考えられる余裕ができるのはいい。試し に今年は車速を上げてみたら、仕上がりが悪くなった(笑)。ここは試行して学びですね」
ラクの次に、どう良くするか
自動操舵はあくまで道具。荒木さんは「基礎操作の重要性」と「常に考える習慣」を重ね て話す。
「自動操舵って、『トラクターを使いこなせる前提』じゃないとダメだと思うんです。基本 操作が分からないまま自動操舵に慣れてしまうと、対応しきれないことが起こりうる。
それに、農業ってセンスが大事だと思う。例えば、『耕深はこれで本当にいいの?』『トラ クターのこのスイッチは何のためにあるの?』って常に考えられることもセンス。『トラク ターに乗れた』で終わらず、『もっと良くするには?』を考え続けられることがセンスだと 思う。
自動操舵のいいところは、ハンドル操作に集中しなくてよくなるから他のことを考えられ ること。『 ラクになった』で終わりにせず、先を見ないといけない。これは従業員にも共有 してます」
アグリヘリテージは、乾田直播や初冬直播、ザルビオ フィールドマネージャーでの生育予 測など、省力技術を積極的に取り入れ、気候や土壌に合った栽培を思考し続けている。 考 えるための余白づくりに、自動操舵が一役買っているようだ。